衆議院環境委員会 会議録(抜粋)
第2号 平成21年3月24日(火曜日)

○水野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋品子君。

○土屋(品)委員 自由民主党の土屋品子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。時間もないので、早速始めたいと思います。

 周知のとおり、二〇〇七年に発表されましたIPCCの第四次報告書でも深刻な事態を迎えております地球温暖化問題ですけれども、私自身、その実態の一部をかいま見る機会に恵まれましたので、そのことについて少し話をさせていただきます。

 私は、昨年の六月二十七日から七月三日までの間、衆議院議員アイスランド訪問議員団の団長として院から派遣されまして、アイスランド議会との交流促進及び政治経済事情調査を行ってまいりましたが、その際に、首都レイキャビクから数百キロ離れましたヨーロッパ最大のバトナ氷河を視察し、実際の氷河の後退をこの目で見ることができました。

 このバトナ氷河は、アイスランドの国土面積の約一二から一三%を占めている広大な氷河ですけれども、その中のスカフタフェル氷河と呼ばれるところを歩きながら、地球温暖化の影響等についてバトナ氷河国立公園のマネジャーから説明を受けました。そのとき目に触れた、標高の一番高いところで二千百十メートルという氷河のスケールとその後退の規模には、実際に、モレーン、氷堆石という氷河がなくなった跡の土の上を歩きながらだったんですけれども、大変驚きました。

 説明によりますと、氷河は百年ぐらい前から縮小していて、一九〇〇年から一九四〇年の四十年間で約五百メートル後退したと言っています。それで、最近数年間では、二〇〇六年に九十六メートル、二〇〇七年は五十メートルと年によって後退の程度は違うようですけれども、現在、毎日五十センチぐらいの後退で急激に縮小しているとのことで、人為的起源による温暖化の影響は否定できないとのことでございました。

 さて、京都議定書は昨年から実施段階に入りましたが、マイナス六%の約束を堅持しなければならない我が国の温室効果ガス排出量の最新の総排出量速報値は、平成十九年度の速報値で、京都議定書の規定による基準年の総排出量に比べると、総排出量としては八・七%上回っており、議定書の六%削減約束を達成するためには、森林吸収源対策や京都メカニズムでの確保が目標どおりだった場合に、九・三%の削減が必要となると理解していますが、それでよいでしょうか、お答えいただきたいと思います。

○寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、我が国の二〇〇七年度の温室効果ガスの総排出量は十三億七千百万トンでございまして、京都議定書の基準年比でプラス八・七%。御指摘のとおり、森林吸収源対策で三・八%、それから京都メカニズムで一・六%を想定しておりますので、これを差し引きますと、マイナス六%達成のためには九・三%の排出削減が必要と考えております。

○土屋(品)委員 さてそこで、この数字を達成するための方策についてどのようなビジョンを描いているのかについて、例えば原子力発電所の利用率や家庭部門の排出量削減策を簡単に御説明願いたいと思います。特に、国内の循環型社会への転換に向け、スリーR運動の重要性は言うまでもないわけですけれども、最近のリデュース、リユースの促進策についての地方公共団体や企業等の取り組み状況について、私が環境副大臣のときに始まったと思うんですけれども、杉並区のレジ袋運動、これから全国に展開していったと思うんですけれども、今の全国展開状況とあわせてお答え願いたいと思います。

○寺田政府参考人 マイナス六%の削減目標の達成のための施策というのは極めて広範多岐にわたるものでございますけれども、今御指摘のございました、例えば電源について言いますと、最近の電力原単位の悪化というのは、原子力発電所の停止に伴いますところの電力原単位の悪化ということになっておりますけれども、一応、京都議定書の目標達成計画では、過去記録されました我が国の原子力発電所の稼働状況がよかったころ、八〇%以上の稼働率というものを見込んでいるところでございます。

 また、御指摘ございましたCO2の削減にも寄与するレジ袋の削減等の運動でございますけれども、現在、レジ袋の削減の取り組みについて言いますと、全都道府県の約八割、市町村の約四割が何らかの方法でレジ袋削減の取り組みを実施しておりまして、環境省としても、本年一月の全国大会の開催を初めとしまして、先進的な取り組み事例の発信などを通じまして国民運動としての盛り上がりを後押ししていきたいと考えておるところでございます。

○土屋(品)委員 原子力の問題はちょっと深刻なのかなと思うんですけれども、八割というと、まだまだ現在の稼働率からすると大変厳しいかと思いますけれども、この辺は住民の理解というのが非常に大事だと思いますので、続けて努力していただきたいと思います。あと、レジ袋運動も、四割というと、これが多いのか少ないのかというのはいろいろ人によって感覚的なものがあると思いますけれども、引き続き、八割ぐらいを目標に頑張っていただきたいと思います。

 さて、京都議定書が失効する二〇一三年以降の次期枠組みについては、ことしの十二月にコペンハーゲンで開催されますCOP15で決定される予定ですけれども、それに先立ち昨年末ポーランドで開催されたCOP14では、先進工業国と途上国の間での意見の溝が埋まらず、あらゆる面で交渉が停滞したと感じております。

 そんな中、我が国として次期枠組みにどうリーダーシップを発揮していくのか、我が国が推奨しているセクター別アプローチについて、昨年十一月にアジア太平洋パートナーシップ鉄鋼タスクフォースが合意した七カ国による試行の評価とともに、その決意についてお聞かせ願います。

○吉野副大臣 お答え申し上げます。

 ポスト京都で一番大事なのは、IPCCの求めている科学的知見をどう満足させるかということだと思います。そのためには、全世界の国々が参加をしていくということが一番大事になると思います。

 そのためには、まず先進国があって、主要排出国があって、途上国、この三つの排出国があるわけですけれども、一番公平な基準というものをつくっていかねばならない。そのためには、セクター別アプローチというのは、先進国間においては比較可能性がある、鉄鋼業なら鉄鋼業で同じ物差しで比較できる、そういう公平性の問題が一番担保されると思います。また、主要排出国においても、このセクター別アプローチは、比較できるということでも有意な公平性を担保できる、そういう手法だと思います。

 途上国においては、特に今先生おっしゃったようなAPP、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ、主要七カ国が参加しています。全世界の排出量の約六割を中国、インド、日本、アメリカ、豪州、韓国、カナダの七カ国で排出しているわけですので、ここの具体的な取り組みが行われております。

 先般、十二日に、OECD閣僚級ラウンドテーブルがパリで開催されまして、私も参加をさせていただきましたけれども、そこで、電事連の代表の方がAPPの具体的な取り組みを発表しております。具体的に、中国の電力で、メンテナンスも含めて、どういうところをどういうふうにすればもっと効率が上がるかという本当にすばらしい発表をさせていただきました。

 こういう形でセクター別アプローチというものを我が国が提唱して、そのリーダーシップを発揮していきたいと思っております。まさに、COP15においてポスト京都の枠組みづくり、大事な大事な枠組みでございますので、そこに、我が国は、セクター別アプローチというものをきちんと理解していただいて、リーダーシップを発揮していきたいと思っております。

 以上です。

○土屋(品)委員 今、吉野副大臣がおっしゃったように、セクター別アプローチをよく理解していただく、これが非常に大事なことだと思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 さて、昨年の洞爺湖サミットで合意いたしました、世界全体として二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を半減するという長期目標に対して、我が国は少なくとも六〇から八〇%削減という目標を掲げているわけですけれども、その実現のためには低炭素社会への移行が不可欠と考えております。そのためには、排出権取引や環境税の導入といったことを通じた意識変革をどうするかが今後の重要な政策課題であると認識しています。

 世界最大のCO2排出国で京都議定書からの離脱をしていますアメリカ、電力供給の約五〇%を石炭に頼っていて石油の輸入率が約六〇%に達したこの国が今後どのような地球温暖化対策をとろうとしているのか、このことは我が国の環境戦略にとっても重要な要因と考えますが、オバマ大統領は、環境分野への集中投資による雇用創出を目指すグリーン・ニューディール政策を掲げ、温暖化防止策でも、中期的には一九九〇年水準へ、長期的には対一九九〇年比八〇%削減という姿勢を明確に示し、次期枠組みづくりにも積極的な対応をしております。

 国連の潘基文事務総長も、COP14の演説で、現在の金融危機は気候変動問題に取り組む機会でもある、経済危機が拡大する今、緑の成長が数百万の雇用を創出すると発言して、中国や韓国、ドイツでも、再生可能エネルギー産業が景気対策の中心として取り上げられています。

 そこで、我が国の環境対策を経済成長のエンジンにとの取り組みについては、環境立国戦略にも方向性として的確な打ち出しがなされているわけですけれども、環境大臣が総理に提言された今回の「緑の経済と社会の変革」の内容について、投資規模、再生可能エネルギー産業界の拡大、雇用創出といった面から、その効果について御説明願いたいと思います。

○南川政府参考人 ありがとうございます。

 いわゆる日本版グリーン・ニューディール、「緑の経済と社会の変革」でございます。

 私ども、環境を切り口としまして経済や社会の構造を変えていきたい、そして、あるべき日本の姿を示したい、活力ある日本をつくり出したいと考えまして、現在作業をいたしております。

 内容としましては、CO2を大幅に削減できるような低炭素社会をつくるんだ、そういったことがやはり核になろうかと思いまして、再生可能エネルギーの充実ということも大きな柱になることを想定しております。

 現在、作業をしております。したがいまして、投資規模、雇用創出の規模につきましては数字はまだ持っておりませんが、できるだけ早く出したいと思っております。

 その中で、施策としましては、小中学校を初めとする公的な施設への太陽光発電の大々的な導入とか、それから、エコポイントなどを活用しましてテレビとかエアコンとか冷蔵庫の買いかえを大々的に促進する、また、小水力やバイオマスを活用する、そういった再生可能エネルギーを含めた日本の環境技術、そういったことへの投資が進むような形にしていきたいと思っております。その効果につきましても、できるだけ早く算定できるような努力をしたいと思っております。

○土屋(品)委員 ありがとうございます。大変期待しておりますので、頑張っていただきたいと思います。

 次に、排出権取引と環境税についてですけれども、アメリカを見たとき、各州のキャップ・アンド・トレードの取り組みは、二十三州がキャップ・アンド・トレードプログラムを推進し、さらに十州がこれらのプログラムに参加する可能性があるというのが現状の認識なんですけれども、輸送に関しても、特に自動車に関する規制を厳しくしていまして、中には全米の基準より厳しいところもあると聞いています。オバマ大統領は、カリフォルニア等の連邦基準以上の州の規制に関しても支援していくと表明しています。

 これらのことから、現在、各州が取り組んでいる、もしくはこれから取り組むこれらのプログラムは全米基準となっていくと予想されますし、また、期待もされていることだと思います。

 また、企業の視点からは、USCAPに二十七の企業と六つのNGOが参加し、キャップ・アンド・トレードを支持しています。それらの中には、日本でも有名なAIGやクライスラー、フォード、GM、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ペプシコ、それからシーメンス、シェル、ゼロックスといった有名企業が名を連ねていて、彼らは、私たちは、米国経済を成長させながら、米国の排出増加をおくらせ、停止させ、逆転させる道を進むことを約束しますと宣言し、企業活動を推進しています。

 そういった意味では、百年に一度と言われる経済危機で、IPCC第三作業部会の報告にある、二〇三〇年までに排出量を大幅に削減する場合の約一兆ドルとも言われる費用が、この機会に逆に投資として潤沢に世界じゅうを回ることを私は願っているところでございます。

 また、我が国の財政状況を見ましても、年金や医療といった社会保障関係の財源不足は目に見えて逼迫しているわけで、経済状況が好転した時点で、早晩、税制を含めて抜本的な財政改革が検討され、導入されることになると予想することができるわけです。その際に、環境税の導入論議も大いにされるべきと考えますし、ぜひ導入してもらいたいと思うんですけれども、我が国でのキャップ・アンド・トレードと環境税の状況に関しての御所見をお聞かせ願いたいと思います。

○古川大臣政務官 排出量取引や環境税の導入、こういうものは、経済的なインセンティブを与えることによりまして、結果的に温室効果ガスの抑制につながると期待されます。例えば、省エネの機器を購入するとか設備投資をするとか、あるいは低炭素型のライフスタイルへの転換を促すとか、そのような形での効果が期待できるわけです。

 したがいまして、先生おっしゃいますように、環境税や排出量取引というもの、市場メカニズムを活用して社会を変えていく、これは非常に大事な、不可欠な手法だと考えております。したがいまして、今後とも、低炭素社会の実現に向けまして、こういう取り組みに積極的にかかわっていきたいと思っております。

○土屋(品)委員 どうもありがとうございます。

 低炭素社会実現には国民の意識が非常に大事だと思います。

 そんな中で、きょうは文科省にも来ていただいていますけれども、昨年の中教審答申を受けて改訂されました小中学校の新学習指導要領が昨年三月に告示され、一部が平成二十一年から先行実施、小学校は平成二十三年、中学校は平成二十四年に全面実施予定と理解しております。

 そんな中、持続可能な社会という面から、環境教育の重要性は大変大きいものがあると考えています。今回も教科として環境科が採択されなかったことに関しまして、私は当選以来、このことについてはぜひ推進してほしいと言ってまいりましたので大変残念でございましたが、それにしても、中身としては、児童生徒が環境についての理解を深め、責任を持って環境を守るための行動がとれるようにするため、学校における環境教育の一層の充実を図るとして、さまざまな改善充実が行われることには感謝を申し上げるところでございます。ただし、副読本や教材、環境教育を指導する教員等の育成といった面では、まだまだ十分と言えないのではないかと思っております。

 そこで、文部科学省において、今後十年、二十年先を見据えたとき、環境政策の重要性も加味して、環境を教科として採用し、教科書の選考、採択などをしていくことについて、現状でどういう御所見か、お聞かせいただきたいと思います。

○徳久政府参考人 豊かな環境を維持しつつ、持続可能な発展ができる社会を構築するためには、広く国民全体で環境の保全に取り組むことが重要です。このため、学校、家庭、地域社会が連携しながら、子供から大人まで国民一人一人が環境に対する理解と関心を深め、具体的な行動に結びつけられるような環境教育を推進することが重要と考えております。

 現在、学校では、社会科、理科、技術家庭科などの各教科において環境に関する教育が行われるとともに、総合的な学習の時間を活用しまして、既に多くの小中学校で教科横断的な環境に関する教育が推進されているところでございます。

 さらに、今委員御指摘のように、新学習指導要領におきましては、小中学校それぞれにおきまして、持続可能な社会をつくることの重要性の認識とか、持続可能な社会の形成の観点から解決すべき課題の探求に関する学習を取り入れるなど、環境教育に関する内容の充実を図ったところでございます。

 文部科学省といたしまして、委員御指摘の教科として環境科を設けるかどうかにつきましては、中長期的に検討すべき課題と考えてございますけれども、当面は、新学習指導要領の着実な実施を進める中で、環境教育の充実に努めるとともに、新学習指導要領を踏まえた新しい教科書の質、量両面の充実を図ってまいりたいと考えております。

○土屋(品)委員 環境の教科をつくるというのは私の夢でございまして、実現できるようにこれからもいろいろなところで発言させていただきたいと思います。

 さて、来年二〇一〇年は国連の国際生物多様性年で、名古屋においてCOP10が開催されるわけですけれども、主催国として今からどのような活動をしていくのか、また、国内での広報、啓蒙活動が不十分な気がするのですが、その取り組み状況についてお聞かせいただきたいと思います。

○黒田政府参考人 生物多様性に関しましては、その保全また持続可能な利用につきまして国民の一層の深い理解を得ることがとても大事だ、こういうふうに考えておるところでございまして、本年度から普及啓発また広報のプロジェクトを開始しています。

 具体的に申し上げますと、生物多様性にかかわりの深い著名人によります、いきもの応援団というものを発足させて、講演であるとか報道などさまざまな機会に生物多様性についての広報を図る、そういう取り組み、さらに、国民の生物多様性行動リストの提示、民間参画ガイドラインの策定、コミュニケーションワードとして、「地球のいのち、つないでいこう」、こういうものをつくり、公表するというような取り組みを既に行っているところでございます。その他、例えば今月の二十八日には、環境大臣と子供たちとの生物多様性に関する集いというようなものも実施する予定にしております。

 御指摘のとおり、来年はCOP10が開催されます。また、国連が定めました国際生物多様性年でもあるということでございますので、今後、例えばシンポジウムの実施であるとかNGOや企業との対話会合の開催などを初め、数多くの普及啓発、広報活動というものを重点的に展開していきたいと考えておるところでございます。

○土屋(品)委員 本当にいい機会、これをチャンスに、国民が生物多様性ということを理解してもらう機会になればと思います。

 環境立国戦略の策定以来、さまざまな標語、目標がつくられていますけれども、いろいろな言葉ばかりが躍っていて、国民に浸透しているとは言えないものもあると考えておりますので、ぜひ強力に進めていただきたいと思います。

 それから、きのうの新聞に、中国からの大気中に水銀が入っているという記事が出ていましたし、また、数日前でしたか、アホウドリの世界的繁殖地として知られる北太平洋ミッドウェー環礁を含む北西ハワイ諸島で、東アジア地域で出されたごみが流れ着く場所なんだそうですけれども、年間約五十トンの漂着ごみが回収されているとの記事が出ておりました。環境問題というのは、地域や国内での取り組みもさることながら、私は、アジアにおけるASEANプラス3の協力は大変重要であると考えております。

 そこで、最近の日中韓三カ国大臣会合での広域大気汚染と海洋ごみについての成果について、見解をお聞かせ願いたいと思います。

○吉野副大臣 広域の大気汚染とか海洋ごみ問題、関係国が集まってこの問題を議論するということは、本当に大事なことだと思います。

 そういう中で、昨年十二月に第十回の日中韓環境大臣会合が開かれまして、二つの点が合意されました。

 一つは、光化学オキシダント汚染や黄砂に係る科学的知見の共有の研究協力について、さらなる協力をしていくということについて合意いたしました。また、海洋ごみについては、中国及び韓国に対して、海洋ごみ削減に向けた取り組みの強化を求めるとともに、各国の対策、経験の共有、一般への意識啓発活動を通じて、海洋ごみ防止に向けて協力をしていくことを合意いたしました。今後とも、さらにこれを進めていきたいと思っております。

 またことしも日中韓の環境大臣会合が開かれますので、そこでも、先生のおっしゃるこの大気汚染問題、海洋ごみ問題、さらに進めていくようにしていきたいと思っております。

○土屋(品)委員 ありがとうございます。

 次に、化学物質の管理に関してですけれども、我が国でも、国民生活の安心、安全という側面から、このことは大変関心が増大していると思います。

 二〇〇二年に南アフリカのヨハネスブルクで開催されました環境サミット合意でも、二〇二〇年までにすべての化学物質による人の健康や環境への影響を最小化するとの合意がなされて、EUではREACH規制が二〇〇七年から施行されているのは御承知のとおりですけれども、我が国の化審法については、一九七三年の法制定以降の新規化学物質についてすべて事前の審査を定めたもので、既存化学物質については国が一定の安全性評価をしてきたものの、不十分であることから、化審法見直し合同委員会が法改正に向けた報告書を昨年十二月に公表したところであります。

 そこで、今国会で化審法の一部を改正する法律案の審議が求められているわけですけれども、大臣の所信にもあったとおり、とりわけ小児の環境保健対策は、少子高齢化の中、未来を担う小児の健康を守る非常に重要な政策であると考えております。

 そこでお聞きするわけですけれども、現行の法律や法律案では単体の化学物質に関する規制の側面しかなく、学校や家庭においてシックハウス症候群というのが今多くなっていますけれども、これが、単体では大丈夫なものが集まったときに、複合物質による有害なものが影響しているのではないかというような話も出ております。そういう点で、複合物質による有害物質の規制という観点が、今の法律、今後議論する中には欠落しているのではないかと思えるのですけれども、現状での化学物質の複合汚染に関してどのような対策を講じているのか、また今後どのように規制していくかについてお答え願いたいと思います。

 あわせて、次世代の産業基盤技術であるナノマテリアルについても健康や環境に与える影響が未知数であると思うのですが、今後どのように取り組まれる予定か、お聞きしたいと思います。

○原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、単体の化学物質でなく複数の化学物質による影響、これには、例えば、吸入をするあるいは口から入るというように暴露の形態が複数である場合、あるいは物質そのものが複数ある場合、いろいろな場合があるわけですけれども、それぞれ専門家が、いろいろ複合影響があるだろうというふうに言われております。ただ一方、その影響については、試験評価手法そのものがなかなか確立していないというところが現状でございます。

 このため、環境省としましては、複数の暴露を経由した影響についてのメカニズムの解明や、アレルギーとの関係に着目した複合影響について調査研究を進めているところでございます。今後とも、国内外の情報収集をしますとともに、調査研究を進めて、施策の構築に反映してまいりたいと思っております。

 また、ナノマテリアルにつきましては、これもさまざまな分野での利活用が期待されている非常に重要な物質ではありますけれども、人あるいは動植物への影響が及ばないように、適切な管理が必要だと認識しているところでございます。

 このため、環境省としましては、ナノ材料の使用実態等を踏まえた環境中への放出の可能性と管理手法についての知見の収集と整理を行うために、ナノ材料環境影響基礎調査検討会を設置いたしまして、本年の三月に、工業用ナノ材料に関する環境影響防止ガイドラインとして、今後、事業者等がナノ材料に関する環境保全上の適切な管理方策を選択するための情報を取りまとめたところでございます。

 今後、事業者におかれましてこのガイドラインに基づいて適切な管理を進めていただくため、その周知を図りますとともに、まだまだ未解明な分野もございますので、人及び動植物への影響を評価する方法の開発あるいは確立や、測定方法の開発、またナノ材料に関する直接的な調査研究について今後とも実施をいたしまして、施策に反映してまいりたいと考えております。

○土屋(品)委員 時間になりました。

 微小粒子状物質に関する課題とか、まだまだ今後課題はあると思います。また、そのほか、今後の食料、エネルギー問題を考えたときに、バイオマスや地熱発電の取り組み強化などの推進策について、各省との連携を含めて積極的な行動を環境省に期待して、本当は質問したかったんですけれども、ちょっと時間がなかったので。

 我が国の環境行政がこれまで以上に国民の皆様にとって身近になり、国際的にも評価されることを期待いたしまして、本日の私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。